さて今回は具体的な株式評価に入る前に必ず行わなければならない各種の
判定作業についてお話します。
評価の入り口で間違えると大変な事になりますので前段階における判定は
とても重要です。
1.株主としての立場を判定する
中小会社の株式(以下「取引相場のない株式」といいます)は、その株式を
取得した人によって評価方法が変わり、その結果同じ株でも人によって評価額
が大きく異なる場合があります。
それは前回お話した原則的評価方式によるのか特例的評価方式(
以下「配当還元方式」といいます)によるのかの違いにより生じます。
従って取引相場のない株式は評価に入る前に株式を取得した人がどのような
立場の株主になるのかを考えなければなりません。
その株主が有する議決権数やその親族を含めた同一の株主グループの持つ議決権数
によって会社に対してどれだけの支配権が有るのかどうかの判定で、支配力が有る
と判定されれば原則的評価方式により、支配力がないと判定されたら配当還元方式
によることとなります。
2.会社規模を判定する
株主判定において原則的評価方式により評価すると判定された株主は
次はその株式を発行する会社がどの程度の規模なのかを判定します。
中小会社と一口に言っても上場企業に迫るような規模の大きい会社から
個人事業のような小規模な会社までさまざまで、これらを同じ評価基準で
評価することは妥当ではないため原則的評価方式の中で、さらに会社規模
によって具体的な評価方法を設けています。
会社規模の判定には、①取引金額 ②純資産価額 ③従業員数の
三つの要素を用い、さらに取引金額と純資産価額においては「卸売業」
「小売・サービス業」「卸売、小売・サービス業以外」の業態別に判定基準
を設けています。
これらの判定の結果、その発行会社を「大会社」「中会社」「小会社」
のどれに該当するかで具体的評価方法が決まります。
ただしその会社が開業後3年未満の会社であったり、清算中の会社であったり
或いは極端に土地などの保有割合が高いなど特殊な状況にある場合には判定
された具体的な評価方法を適用せずに、これらを「特定の評価会社」として
特別な評価方法によって評価することになります。
また配当還元方式により評価すると判定された株主は会社の規模にかかわらず
配当金額をもとに評価するので、特定の評価会社でない限り会社の規模は判定
せずに株主判定のみによって評価方法が決まることになります。
3.具体的な評価方法
会社規模の判定によって大会社となれば同一業種の上場株式の株価等を
使って評価する類似業種比準方式で評価し、中会社と判定されれば類似業
種比準方式とその会社の資産や負債の額をもとに評価する純資産価額方式
との併用により評価します。
また小会社と判定された場合には純資産価額方式によります。
以上のように取引相場のない株式の評価はとても複雑になりますのでとにかく
前段階の判定を間違えないようにすることがとても重要です。
それでは次回はそれぞれの具体的な評価方法について詳しく見ていきたいと思います。
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